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ROBO SCIENCE

まわり全部の距離を知る ―
LiDAR T-mini Plus

2026.10.31
ER(Expert-rescue)
机の上に置かれた YDLIDAR T-mini Plus。上半分の黒い円筒が回る部分。4本のケーブルで、奥のブレッドボードに載せた Raspberry Pi Pico につながっている
YDLIDAR T-mini Plus。上の黒い円筒が1秒に6回まわり、まわり360方向の距離を測る。

ロボットが迷路を走るには、まわりに壁があるかどうかを知る必要があります。前だけでなく、右も左も後ろも。LiDAR は、それを一度にまとめて測る部品です。

ライダー(LiDAR)は Light Detection And Ranging の略です。光を使って、物までの距離を測るという意味になります。

名前は難しそうですが、測り方そのものは単純です。

光が往復する時間をはかる ― ToF のしくみ

センサーから光を出し、物に当たって跳ね返ってくるまでの時間を測ります。光の速さは決まっているので、時間がわかれば距離が出ます。

センサー かべ 光を出す 跳ね返って戻る この長さが知りたい 距離 = 光の速さ × かかった時間 ÷ 2 往復ぶんなので、2で割る
往復ぶんの時間なので、2で割る。これが ToF(Time of Flight = 飛行時間)。

この測り方を ToF(Time of Flight)といいます。LiDAR も ToF です。別の仕組みではありません。

ただし、光は1秒で地球を7周半します。1m先の物までの往復にかかる時間は、約1億5千万分の1秒。1cm を測り分けようとすれば、150億分の1秒を見分けることになります。これをやってのける電子回路が入っているのが、この部品の中身です。

ToF センサーとの違い ― 1方向か、360度か

よく使われる ToF センサー(VL53L0X など)は、前の1方向だけを測ります。LiDAR は、同じ測り方をしながらセンサー自身が回ります。

ToF センサー 1個 前の1方向だけ ほかを見るには、数を増やす LiDAR 回りながら360度ぜんぶ 測り方はどちらも同じ ToF。回すかどうかが違う
測り方は同じ。回るかどうかで、取れるものが変わる。
ToF センサー 1個LiDAR
測る向き前の1方向360度ぜんぶ
一度に取れる数1個数百個
動く部品なしモーターで回る
値段数百円〜1万円台〜
電気数mA起動時に 1A 近く

4方向を知りたいなら、ToF センサーを4個つければ済みます。実際そうしているロボットは多くあります。では LiDAR は何が違うのか。

「斜め」が取れることです。センサー4個では、前・右・後ろ・左の4つしか分かりません。LiDAR なら、23度の方向の距離も読めます。ロボットが少し斜めを向いていても、そのぶんを差し引いて壁までの距離を出せます。

もうひとつ、ぶつけても1個で済みます。4個を四方に出しておくと、壁にこすったときに全部やられます。

どこで使われているか

LiDAR は、すでに身のまわりで動いています。

自動運転車 人や車までの距離を、 毎秒何千回も測る ロボット掃除機 部屋の形を地図にして、 通ったところを覚える 測量・工事 建物や地形の形を、 点の集まりで記録する
どれも「まわりの形を、点の集まりとして取る」ために使っている。
使われ方何をしているか
自動運転車・運転支援前の車や人までの距離を、毎秒何千回も測る。カメラと違って暗くても測れる
ロボット掃除機部屋の形を地図にして、通ったところを覚える。上に丸いでっぱりがある機種は、たいてい LiDAR
測量・工事建物や地形の形を、点の集まりで記録する。図面を起こす手間が減る
遺跡の調査木が茂った土地でも、木の間をすり抜けた光が地面を測る。上空から森の下の地形を出す
スマートフォン一部の機種に小さな LiDAR が入っている。写真の背景をぼかすときの距離取りなど

遺跡の例は、少し説明が要ります。LiDAR は1方向につき1点ではなく、たくさんの点を取ります。木の葉に当たって返る点もあれば、葉の隙間を抜けて地面まで届く点もある。いちばん遠い点だけを残せば、森の下の地面の形が出てきます。この方法で、中米のジャングルで未発見の都市が見つかっています。

レスキューメイズで何が変わるか

ロボカップジュニアのレスキューメイズは、壁で仕切られた迷路を自分で進み、被災者を見つける競技です。ロボットは1マスごとに、前後左右の壁の有無を知る必要があります。

場面ToF センサー4個LiDAR
前後左右の壁測れる測れる
ロボットが斜めを向いた4つとも値が狂う。どれだけ斜めかも分からない壁の面そのものが見えるので、傾きが計算できる
マスの中央にいるか前後・左右の差から推定する同じく測れる。点が多いぶん安定する
配線I2C でつなぐが、同じアドレスの部品が4つになり、工夫が要るシリアル2本だけ

私たちが LiDAR を選んだ理由は、2つ目の行です。迷路のマスは壁で囲まれています。ロボットが少し斜めを向いたまま距離を測ると、壁までの距離が実際より長く出ます。マスの中央だと思って止まった場所が、ずれていく。

LiDAR なら、壁は「点が一直線に並んだもの」として見えます。その線の傾きが、ロボットの傾きです。

もちろん、いいことばかりではありません。

困ること中身
電気を食う起動の瞬間に最大 1A。パソコンの USB だけでは回らないことがある
重さと高さ38.6 × 38.6 × 33.9mm。ロボットの上に載せる場所が要る
近すぎると測れない最短 0.05m。壁にぴったり寄せると値が出ない
回る部品があるぶつけたり、ほこりが入ったりすると止まる

T-mini Plus の仕様

私たちが使っているのは YDLIDAR T-mini Plus(秋月電子 130098・税込 14,800円)です。

項目値
測れる距離0.05 〜 12m(よく反射する物)/ 0.05 〜 4m(反射しにくい物)
誤差20mm
1秒あたりの測定回数4000回
1秒あたりの回転6回(6〜12回に変えられる)
角度のこまかさ0.54度
通信シリアル(UART)230400bps・3.3V
電源5V。起動時 840mA(最大1A)、回転中 340mA
光赤外線 905nm・クラス1(目に安全な区分)
大きさ38.6 × 38.6 × 33.9mm

1周で何点取れるのかを計算してみます。毎秒4000点を、毎秒6回転で割ると、1周あたり 約667点。360度を667点で割ると、0.54度に1点です。仕様の「角度のこまかさ 0.54度」は、この割り算から出ています。

迷路のマスは30cm四方です。0.05〜12m という範囲は、迷路には十分すぎるほどあります。むしろ最短の 0.05m のほうが効いてきます。壁から5cm より近づくと、その方向は測れません。

実際に Pico につないで距離を読むところは 正面までの距離を読む ― LiDAR をつなぐ にあります。配線・電源・パケットの読み方と、そのまま書き込めるプログラムです。

ロボサイエンスについて

ロボカップジュニア2027 に向けて、レスキュー(災害救助)とサッカーの2種目に取り組みます。プログラミングと電子工作の経験は問いません。

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