ノーベル賞を受賞した科学者たちが口を揃えて語る「原点」。それは、少年期に出会った一冊の本と、心に芽生えた「なぜ」でした。
科学との出会い
2019年のノーベル化学賞は、リチウムイオン電池の開発を行った吉野彰氏が受賞されました。科学に興味を抱いた原点は、小学校4年生の時、担任の先生が薦めた「ろうそくの科学」にあったと述べています。これを契機に、街の本屋さんにはこの本が山積みされました。
また、2016年に生理学・医学賞を受賞された大隅良典さんも、お兄さんから贈られたこの本を読んだことが科学者の原点になったと述べています。
この本は、マイケル・ファラデー氏が1860年の英国王立研究所で行ったクリスマス講演の記録です。ロウソクの燃焼を通して、物が燃えるには酸素が必要で、光や熱が出て水や炭酸ガスを生じること、しかし重さは変わらないこと——などを、6回の実験で示していきます。
「なぜ」が失われている現在
吉野少年らに大きな影響を及ぼしたのは、化学反応の基本が簡潔に、生き生きと述べられているからだと思います。少年期の「なぜ」は研究者の原点であり、教師や本との出会いの大切さを示しています。
しかし、本を読んで知識として詰め込むだけでなく、一つずつ実験を通して確認していくことが大切です。今の学校では、コンピュータや英語学習に時間を割かれて、理科の実験には手が回らなくなっています。
また家庭においても、高度な電子機器・電化が進み、火は使わない、工作はしないなど、子供たちがシンプルに「なぜ」を考える機会が失われています。
だからこそ「科学の学校」が必要
少年期に、科学者の原点である「なぜ」を芽生えさせるには、良書との出会いも重要ですが、「なぜ」を知る機会を多く与えることも大切です。この点で「科学の学校」は、たいへん有用です。
この教室は、知識を詰め込む学習塾とは少し違います。皆が経験して誰でも知っている身近な事柄に焦点を合わせて、「なぜ」と興味を引き出し、易しく科学的な説明を加えて「わかった」を体得させようとしています。ある日突然に、分かった、面白い、が訪れ、夢中になります。
スマホゲームやアニメに没頭しがちな子供たちですが、場を与えることで開眼の機会が高まります。
皆が科学者になるわけではありません。けれど、科学的な考え方の基本を身に着けておくことは、大切だと思います。