マッチはいつも取り合いでした。マッチ箱をなでるように一回擦り、アルコールランプに火をともす。軽く軸木を振って火を消しつつ、左手でランプを三脚の下に滑らせる一連の作業——。
心に残る実験の思い出
小学2年生から6年生まで「科学の学校」に通っていました。卒業してからもう10年以上たちますが、アルコールランプを使う実験をはじめ、楽しかった実験の記憶はよく残っています。
レモン汁をかけると麺の色が変わる紫キャベツの焼きそばづくりがお気に入りで、家でも何度も作りました。最近、久しぶりに作ってみたら、びしょびしょ、かつ、すっぱすぎました。
ミョウバンと尿素の大きな結晶は、今もジャムの瓶に入れて机の引き出しにしまっています。見本を持ってきてくれた先生が、「これは何十年も大切に保管しているんだよ」と言っていたので、わたしも大事に抱えて持って帰りました。
授業中の先生との会話から仕入れた知識は、格好の夜ごはんのネタでした。たとえば、大腸菌にも危険じゃない種類はいる、ビーカーの目盛りはだいたいなのでメスシリンダーを使う、研究者はシャーペンの消しゴムは使わない(?)というふうに。
理科好きから研究の道へ
理科好きはそのまま続き、進学した中学校では科学部生物班に入部。毎日のように学校の裏山で昆虫採集や植物観察をしました。
高校では、校内に生息する希少植物の送粉者を探す研究に没頭し、観察と実験を繰り返して出した成果は全国一位の文部科学大臣賞を受賞しました。
その後、京都大学農学部・大学院農学研究科に進み、今はピペット片手に顕微鏡で細胞を覗く日々です。
今度は、子どもたちに伝える番
数年前から「科学の学校」で講師をしています。大学レベルまで踏み込んで解説しても、案外みんな食いついてきます。
マッチはもちろん、試験管にもフラスコにも目を輝かせています。そんな子どもたちの好奇心に負けず、私自身、毎週の実験に興奮しています。
マッチを擦っていたあの手は、今はピペットを握っている。